「嫌われる勇気」は、人生に悩む青年が、「アドラー心理学」を実践する哲人と対話する中で、自分の不幸の原因、幸福になるための考え方を哲人から学んでいく、ストーリー形式の自己啓発書です。
私自身は、マコなり社長のYouTubeチャンネルで何度もオススメされていたことがきっかけで興味を持ち、読んでみることにしました。
「劣等感、ネガティブ思考の処方箋」とも言えるような、対人関係でのものの見方・思考の転換ができる一冊です。
- ついつい人と比べてしまう自分が嫌だ
- 自己評価が低いことで悩んでいる
- 自分のネガティブな思考パターンを変えたい
- つい家族や周りの人にイライラしてしまう
ただし、「劣等感に悩むわたしを優しく受け入れ、慰め励ましてくれる」感じではありません。劇薬をガンガン飲まされるような、ちょっと衝撃的な本です。
読み終わって、自分の中でふつふつと勇気がわいてくるような、何か変化が起きているような、そんな効果を感じた一冊でした。この記事を読んでよさそうだと思った方は、ぜひ書籍で読んでみてください。
心に響いた「嫌われる勇気」の名言6選
「嫌われる勇気」の中で特に個人的に心に響いた、心に残った「名言」と思える部分の紹介と感想をまとめています。
名言1:大切なのは、なにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである
幸せを実感できず、自分を好きになれない青年に対して、哲人はこのアドラーの言葉を引用しました。
大切なのは、なにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである
哲人は、青年が幸せを感じられないのは、他人と比較して「あの人のようだったら幸せになれるのに」と思っているからと指摘しました。
自分にないものに注目していても、現実はなにも変わらない。自分が持っているものに注目してそれをどう活かすかを考える方がよほど建設的ですよね。
そうわかっていても、ついつい思考パターンが「人と比べてどうこう」になってしまいがちな私は、あらためてこの思考パターンをやめるべきだと気付かされました。
このことは、本の後半ででてくる、対人関係の「軸」の話とも関連しています。対人関係の軸が縦方向だと、常に他の人と競争状態になる、つまり、他の人と比べて自分は勝った、負けたと考えることになる。そうなると周りがすべて敵になり、不幸になると。
ちなみに「嫌われる勇気」の中では、自分が持っているものを受け入れることを「自己受容」「肯定的なあきらめ」というふうにも表現しています。自己受容は、幸福感を感じるための第一歩。まずは自分を受け入れましょう。
名言2:「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない
「他者から承認されてこそ、自分の価値を実感でき、自分に自信を持つことができる。劣等感を払拭できる」と主張する青年にたいして、哲人は「他者の期待を満たすために生きているのではない。他人の期待など、満たす必要はない」とはっきり言いました。
ここで青年は「あまりにも身勝手な議論だ!」と反論します。わたしも最初は青年の気持ちと同感でした。
でも、哲人の次の言葉を読んでハッとさせられました。
他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他者の人生を生きることになる
他人の顔色を伺いながら、他人の視線や評価を気にしながら生きるというのは苦しい生活になると。
親や先生など目上の人からの評価を気にしながら育ってきた、「ほめられたがり」の傾向を持っている自分にとって「刺さる」名言でした。
もちろん、他人の期待を満たさなくていい=身勝手に振る舞ってもいいという意味ではありません。「課題の分離」という考え方で、他者の課題と自分の課題を明確に分けることを薦めています。この部分は割愛するので気になる方はぜひ書籍を読んでみてください。
名言3:自由とは他者から嫌われることである
「他者から嫌われたくない」という気持ちは、人間にとって極めて自然な欲望としたうえで、その欲望のおもむくままに、いわば坂道を転がる石のように生きることが「自由」なのか。
それを哲人は「違う」「そんな生き方は欲望や衝動の奴隷でしかない」と言います。そして続けて言ったのが次の言葉です。
ほんとうの自由とは、転がる自分を下から押し上げていくような態度なのです。
私たちは生きていく上で他人と関わらずに生きることはできません。そして、すべての人から嫌われないように生きていこうとするなら、不自由な生き方を強いられることになってしまいます。
嫌われる可能性を怖れることなく、前に進んでいく。坂道を転がるように生きるのではなく、眼前の坂を登っていく、それが人間にとっての自由なのです。
まさに書籍のタイトルでもある「嫌われる勇気」が必要だということですね。
他人から承認されないことを恐れながら同調思考で坂道を転がるように生きる人生と、嫌われる可能性を恐れずに自分の生き方を貫く、勇気ある人生。確かに後者の方が本当の意味で自由だなと感じます。
ここまでの名言だけだと、この本は「他人のことはどうでもいいから自分のやりたいことを勇気を持ってやれ」と言っているような本だと誤解されるかもしれません。でも読み進めていくとそうではないことがわかります。他者のことをもっと大切にできる考え方を教えてくれます。
名言4:われわれは「同じではないけれど対等」
ついつい他の人と比較してしまう、競争心を持ってしまうことに関して、哲人は言います。
誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいい。…健全な健全な劣等感とは、他者との比較のなかでうまれるのではなく、「理想の自分」との比較から生まれるものです。
そして、続けて言います。
我々は誰もが違っています。…違いがあることは積極的に認めましょう。しかし、われわれは「同じではないけれど対等」なのです。
ここで哲人は、人それぞれ違っていることを善悪や優劣をからめないようにと言っています。そして、自分が今の自分より前に進むことにこそ価値があると。
競争心だけで頑張るって本当に疲れます。そもそも、みんなそれぞれ人生のスタート地点も通る道も違っていて、同じ人なんて一人もいないんですよね。それなら人と自分を比べること自体に意味がない。確かに、と思いました。
「今の自分より前に進む」ことに意識を集中できれば、前に進めた部分を素直に喜ぶことができそうです。
名言5:一番大切なのは、他者を「評価」しない、ということ
哲人は、他者を評価するという縦軸の関係ではなく、他者に感謝したり尊敬・喜びの言葉をかける横軸の関係を築くように進めています。
ほめ言葉は、相手を評価するための縦軸の言葉。それに対して、感謝の言葉は相手と横軸のつながりを築く言葉です。
人は感謝の言葉を聞いた時、自らが他者に貢献できたことを知ります。
感謝や喜びの言葉を積極的に使ってアプローチすることで、相手と対等な横軸の関係を築いていくことができる。そういう関係を築いていくことで、自分が誰かに貢献できている、と感じることができ、それが生きる勇気にもつながっていく、と。
結局、自分が周りの人にどう接するかが、まわりまわって自分に対する見方にも影響するのだということを感じた部分です。
同時に、とかく「褒めなくては」と気を張ってしまうような場面でも、相手を対等な関係でみて、純粋に感謝や尊敬、喜びを伝えるだけでいいんだということにも気づかされました。
名言6:他者のことを「行為」のレベルではなく、「存在」のレベルで見よう
青年は「他者貢献」について反論します。
誰かの役に立ててこそ、自らの価値を実感できる。
逆にいうと、他者に役立てない人間には価値はない。そうおっしゃっているのですよね?
青年は、自分では何もすることができない体が不自由なお年寄りを例に挙げて言いました。哲人の言っていることは、「他者貢献」ができない人間には価値がない、と言っているのと同じだと。
それに対して哲人が言った言葉。心に刺さります。
あなたはいま、他者のことを「行為」のレベルで見ています。つまり、その人が「何をしたか」という次元です。
他者のことを「行為」のレベルではなく、「存在」のレベルで見ていきましょう。他者が「なにをしたか」で判断せず、そこに存在していること、それ自体を喜び、感謝の言葉をかけていくのです。
さらにグサっと刺さります。
われわれは他者を見るとき、そもすれば「自分にとっての理想像」を勝手にこしらえ、そこから引き算するように評価してしまうものです。理想像としての100点から、徐々に減点する。これはまさしく「評価」の発想です。
「あの人が」「自分が」何をしたか、という行動レベルで物事を見ていると、またしても「評価の軸」で見ることに。特に「自分にとっての理想像」と減点方式、家族の中でよくやってしまいます。。
毎日顔を合わせていると、夫と息子がいてくれるだけで嬉しい、感謝!という気持ちになれないことが色々おきます。でもイラっと来た時、この名言を思い返すことで、「縦軸の関係」になっていないか、減点方式で見ていないか、ちょっと一呼吸おいて考えたいと思いました。
「嫌われる勇気」を読んだ後のわたしの変化
「まわりからどう見られているか」を気にすることが、自分をどれだけ窮屈な気持ちにならせるかを客観的に見直す機会になりましたた。
そもそも「誰からも嫌われないようにする」なんていうことは不可能。なのに、相手の反応を気にしすぎて、自分の考えをはっきり言えなかったり、行動に移せなかったり。
そんな自分に、勇気を持って前に進もうという気持ちを与えてくれました。ほんの小さなことですが、この「嫌われる勇気」を読む前と後の変化がわかるエピソードを一つ書きたいと思います。
私が今住んでいる国では、基本的に同じマンションに住む人とは挨拶をすることが普通です。なので私も当たり前のように挨拶をこれまで9年間してきました。が、つい最近引っ越してきた場所では、人によって挨拶する人としない人がいることに気づきました。
ご近所さんに挨拶をしたのに、相手はなにも言わずに行ってしまった。そっけなく返された。
それだけで、私は「挨拶しなければよかった。なんであの人は無視したんだろう。私が外国人だからだろうか・・・」などと、ぐるぐる考え始めて嫌な気持ちになってまっていました。
そして「嫌われる勇気」を読んだ後にも、同じようなことが起きました。
でも今回は、気持ちを割り切ることができました。「向こうが返すかどうかは自分が決めることではない。自分は挨拶してよかった」と。
相手が挨拶を返すかどうかは、「嫌われる勇気」の中でいう、「相手の課題」です。自分が相手の課題まで背負うと、気分が重くなります。
自分の課題である「あいさつをする」だけを達成することに思いが向いていれば、気持ちよく過ごせるのだと感じた瞬間です。
自分にとってのベスト名言
他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他者の人生を生きることになる。
誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいい。…健全な劣等感とは、他者との比較のなかでうまれるのではなく、「理想の自分」との比較から生まれるものです。
自分の人生を振り返ってみると、いつもこの二つの生き方の間で揺れながら生きてきたように思います。特に社会人になる前までの自分は、同調思考でいつも相手に合わせなければとビクビクしながら生きていることが多かったように思います。
それが、もう耐えきれなくなって、バーンと弾けるように海外に飛び出してみたり。でも海外に住んで自由になったような気がした自分も、気が付けばまた誰かの目を気にして生きている日々。
人生折り返し地点を過ぎたけど、これからは誰とも比較することなく、劣等感からも優越感からも解放されて自由にいきたい、と決意しました。
まとめ
「嫌われる勇気」は、アドラー心理学をベースとして対人関係でのものの見方・思考の転換ができる、ストーリー形式の自己啓発書です。
2022年の時点で40以上の言語に翻訳され、「幸せになる勇気」との二部作の世界累計が一千万部を超える*という、ベストセラーのビジネス書。
*ビジネス書としては異例の「大快挙」を達成!!『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の勇気シリーズが世界累計1000万部突破!
「自己肯定感が低い」「つい人の目を気にしてしまう」「家族や友人など周りとの関係を改善したい」と思っている方、そして何より「変わりたい!」と思っている方は、ぜひ読んでみてください。